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降水確率0%

電車を乗り継いで、辿り着いた懐かしいちょっと変わった駅の名前。
駅周辺はすっかり変わってしまっていて、あと1週間で完成する大きくて綺麗な、真っ白なテラスに少し胸が痛んだ。
百貨店沿いの道を真っ直ぐ歩く。
商店街はすっかり廃れてしまっていて、小さな個人書店は其処になくて、けれど入り口の歯医者さんは変わらずに其処にあった。
自転車屋さんを左に曲がれば、小学校へと続く道。
真っ直ぐ行って坂を上れば、懐かしい、あの場所。
信号が青に変わる。
私は真っ直ぐ歩き出す。
あの頃よりもマンションが増えていて、まだ夏の気候が引きずっているせいか桜並木は青かった。
自然と歩みが速くなる。
けれど、不思議と心は落ち着いていた。
「…ただいま」
記憶のままの姿で、全く変化のないかつて住んでいた場所に、私は言った。
オートロックなどの設備が当たり前になっている現在、此処は相変わらず誰でも入れるような、ただガラスの扉があるだけ。
そっとその扉を開いてみる。
ひんやりとした空気。少し薄暗い照明、1階へ続く階段。
郵便受けに知った名前は一つもなく、私が住んでいた部屋の番号の下には、最近越してきたばかりなのか、比較的新しいネームテープが貼り付けてあった。
外へ出て、もう一度見上げる。
(…誰も、もう、いないんだね)
空の青さが、やけに眩しい。
(でも、私、ちゃんと戻って来たよ)
(一人でも、来たよ)
胸が苦しかった。
張り裂けてしまいそうなくらい、寂しさが込み上げてくる。
「ねぇ、好きだよ。大好きだよ。大好きだったの」
いくら瞳を閉じても、あの頃のような、子供たちの声は聞こえない。
(でも、『また会える』って私、今でも信じてる)
瞳を開き、「ありがとう」と2度呟いて、私はもと来た道を歩き出す。
何度も振り返りそうになりながら、それでも前だけを見て、背筋を伸ばして一歩一歩足を進める。

この一歩は、今を生きる、明日を生きていく、私のための一歩。
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榎並緋菜

Author:榎並緋菜
大阪府出身。学生。
『D.Gray-man』をはじめとするWJ系中心に二次創作小説を書く予定。

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